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2026.2.23 コラム

幸福とは「承認の土壌」に咲く自己実現である

アリストテレスとマズローに学ぶ、組織と人の可能性

人はなぜ働くのか。
人はどこへ向かえば「よく生きた」と言えるのか。

この問いに、古代ギリシャの哲学者 アリストテレス は明快に答えました。
人生の最大の目的は「幸福(エウダイモニア)」にある。

ここで言う幸福とは、単なる快楽や一時的な満足ではありません。
社会の中で徳を発揮し、自らの可能性を十分に開花させる状態。
すなわち、社会生活における自己実現です。

この思想は、約二千年の時を超えて、心理学者 アブラハム・マズロー の理論と響き合います。

自己実現は「いきなり」起こらない

マズローの五段階欲求説では、人間の欲求は階層構造を持つとされます。

1)自己実現の欲求:自分の持てる能力を発揮し、あるべき自分になりたいという高次の欲求。
2)承認の欲求:他者から認められたい、尊敬されたい、評価されたいという欲求。
3)所属と愛の欲求:友人、家族、組織などに受け入れられたい、仲間がほしいという欲求。
4)安全の欲求:危険な環境から身を守り、健康や経済的な安全を求める欲求。
5)生理的欲求:食事、睡眠、排泄など、生存に必要な本能的な欲求。

最上位にあるのが「自己実現欲求」です。
しかし、それは土台が整って初めて到達できるものです。

特に重要なのが、上から二番目に位置する承認欲求。

人は、
・認められたい
・尊重されたい
・自分の存在価値を確認したい
という欲求が満たされなければ、自らの可能性を最大限に発揮する段階へは進めません。
つまり、承認なき自己実現は存在しないのです。

アリストテレス的幸福とマズローの接点

アリストテレスの言う幸福とは、「人間らしく徳を発揮し、社会の中で役割を果たすこと」。
これはマズローの最上位にある自己実現と極めて近い概念です。
しかし、その前提には何があるか。

それは、自分の存在が社会に受け入れられているという感覚。
言い換えれば、承認です。

ここに両者の親和性があります。

承認のある組織は、なぜ強いのか

承認欲求が満たされる環境では、人はこう変わります。
・挑戦を恐れなくなる
・意見を発言できる
・失敗を学習に変えられる
・自責思考が育つ
結果として、個人のパフォーマンスは最大化されます。

そして重要なのは、個人の自己実現が、組織力の最大化につながるということです。

承認の土壌がある組織での業務には、押し付けられ感、やらされ感がありません。
つまり、命令や管理による外発的動機づけによって働くのではありません。
承認欲求が満たされることで、内発的動機づけが自然に生まれるのです。
そして主体的、能動的、自発的に動くようになるのです。

これは単なるモチベーション論ではありません。
組織設計の根幹に関わるテーマです。

幸福論は、組織論である

アリストテレスは幸福を「個人の問題」として語りながら、その実現の場を「社会」に置きました。
マズローは欲求を「個人の心理」として説明しながら、最上位を「自己実現」という社会的行為に置きました。

両者に共通するのは、人は他者との関係性の中でしか完成しないという視点です。
だからこそ、経営や組織づくりにおいて重要なのは、評価制度やKPI以前に、

「あなたの存在を認めている」

というメッセージが届く環境をつくること。

承認があるからこそ、自己実現が芽吹く。
自己実現があるからこそ、幸福が生まれる。
幸福があるからこそ、組織は強くなる。

もし組織の力を最大化したいなら、まず問い直すべきはこれかもしれません。

【私たちの組織には、承認の土壌があるだろうか?】

幸福論は、古典哲学の話ではありません。
それは、人と組織の可能性を解き放つための実践理論なのです。

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