コラム-経営コンサルティング、COO代行、人材育成- 守破離コンサルティング

コラム
2026.3.31 経営コンサルティング

プロフェッショナルは人格を使い分ける ~リーダーの人格 第一部~

事務局という名の「ペルソナ」

組織の中で仕事をしていると、時に「本音」と「役割」の間で揺れることがある。
たとえば、改革プロジェクトの事務局に任命された人がいるとする。
その人は本音では、現場の苦労をよく知っている。むしろ経営陣の方針に対して違和感を覚えているかもしれない。
しかし事務局として会議を運営する場面では、特定の立場に偏るわけにはいかない。
現場の味方として振る舞うこともできなければ、経営の代弁者になることも望ましくない。
その人は、あえて自分の本音を脇に置き、議論が前に進むように振る舞う。
中立を保ち、時には双方の意見を代弁し、対立を整理し、より高い次元での合意を探る。
このとき、その人は「自分の人格」とは少し異なる人格をまとっている。
いわば、役割としての仮面をかぶっているのである。

ユングの提唱

このような仮面のことを、心理学では「ペルソナ」と呼ぶ。
この概念を提唱したのは、スイスの心理学者、ユング:Carl Gustav Jung である。
ペルソナとは、社会の中で求められる役割を果たすための「社会的な人格」である。
人は誰でも、家庭では親としての顔を持ち、職場では上司や部下としての顔を持つ。
それぞれの場面で、振る舞い方は自然と変わる。
つまり人間は本来、複数の人格を使い分けながら社会生活を営んでいるのである。
このことは、ビジネスの世界では特に重要な意味を持つ。

プロに求められる「演出力」

プロフェッショナルとは、単に専門知識や技術を持っている人のことではない。
状況に応じて、自分の立場や感情を一歩引いたところに置き、組織全体にとって最適な振る舞いができる人のことである。
例えば、コンサルタントは顧客企業の課題を解決する立場にある。
しかし時として、自分の考えをそのまま主張することが最善とは限らない。
議論を深めるために、あえて異なる視点を提示することもある。
対立している二つの意見を一度整理し、双方が納得できる新しい案へと導くこともある。
そこでは個人の感情よりも、「議論を成熟させる」という役割が優先される。
つまりコンサルタントは、自分自身の人格とは別に、プロフェッショナルとしての人格をまとっているのである。
このような能力は、組織の中で特に重要な役割を担う人に求められる。
プロジェクトの事務局、ファシリテーター、あるいは経営と現場の橋渡しをする管理職などは、まさにその典型だろう。

ファシリテーションにおいて大切にしたいこと

彼らは特定の立場の代弁者ではなく、議論の交通整理役である。
対立を煽るのではなく、異なる意見をつなぎ合わせ、より高い次元の結論へ導く。
哲学者ヘーゲルは、対立する概念を統合して新しい価値を生み出すことを「止揚(アウフヘーベン)」と呼んだ。
組織の意思決定もまた、この止揚のプロセスを通じて成熟していく。
そして、その過程を支えるのが、役割としての人格、すなわちペルソナである。
考えてみれば、プロフェッショナルとは「人格を使い分ける人」なのかもしれない。
本音だけで行動すれば、組織の議論はすぐに感情的な対立に陥る。
しかし役割としての人格をまとえば、議論は建設的な方向へと進んでいく。
自分の立場に固執するのではなく、議論を一段高いところから見渡す。
その視点に立ったとき、人は初めて組織の成長に貢献することができる。
事務局とは、単なる会議の段取り役ではない。
それは、組織の意思決定を支える静かなプロフェッショナルである。

役割としての人格

彼らは表舞台に立つことは少ない。
しかし、議論が混乱せず前に進むのは、そこに「役割としての人格」があるからだ。
組織を変えるのは、必ずしも強いリーダーだけではない。
時に、静かに仮面をかぶりながら議論を導く人こそが、組織の未来を支えているのである。

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